あとがきとして

『出逢いの美・出逢いの喜び』

アメリカン・アンティーク・パッチワークキルトには、一枚一枚にその時代の物語があります。
キルトにメモリアルを縫い込めたのです。
様々なパターンにも味があり、生活の中の人の思い出と祈りがあるのです。
出逢いにより生まれる新しい価値があります。出逢いにより生まれる広がりがあります。
端裂はぎれや古裂ふるぎれをもったいないと思う所から始まったアメリカンアンティークキルト。
開拓、独立戦争、南北戦争、歴史の流れの中で翻弄ほんろうされる人生や暮らしの苦しさを人々は、祈りと知恵で切り開いていきました。そして人々は美しさを求め、形にしてきました。
「エコ・アメリカンキルトミュージアム」では今回まだご紹介しきれないアメリカン・アンティーク・パッチワークキルトも多数あります。順次紹介して参ります。どのキルトにも、人々の思いが縫い込められ、数々の意味もデザインされています。
遠く古代より、世界各地で布は実用以上の意味を持って取り扱われてきました。
日本でも、同じように人々は布への想いを託しています。正倉院の宝物裂ほうもつぎれ、茶道の名物裂めいぶつぎれ、 京都祇園祭の山鉾やまぼこの懸装品けそうひんなどなど枚挙まいきょにいとまがありません。
そして、袈裟。パッチワークの先駆けともいえる法衣の一つである袈裟は、「五徳ごとく、十利じゅうりあり」といわれています。
いずれも仏の道を諭し、人の幸せを願うものです。
生きる知恵を伝える仏の教え。出逢いで生まれる新しい価値、出逢いで生まれる広がり。豊かで美しい人生のために、仏教の出会いのご縁が用意されています。
次回をご期待ください。

文章並びに制作協力：放送作家　杉本　佳男様